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映画「ペンギン・ハイウェイ」が2018年8月18日に公開となったので早速観てきた。
レイトショーだったが、初日ということもあり、結構な人の入りだった。
しかし、お客さんの9割近くが男性。
作品的にはもっと女性がいてもいいとは思うが、なぜこんなに偏ったのだろう。
先に感想を言うと、夏映画としてとても良かった。
この映画では川や雨や海など沢山の水が出てくる。
どれも美しく、みずみずしく描かれていて、観ていてとても清々しい気持ちになれる。
キャラクターも清々しいキャラばかり。
嫌われ役のキャラはいるが、嫌悪感を抱くようなキャラではないので、嫌な気分にならない。
そしてストーリーも申し分ない。
夏を締める映画としてふさわしい作品だと思う。
そんなわけで、具体的な感想を書こうと思う。
ここからはネタバレありの感想なので、これから映画を観る人でネタバレ嫌いな人は注意!
この記事の目次
映画「ペンギン・ハイウェイ」について
「ペンギン・ハイウェイ」とは
![](https://mac-design.work/wp/wp-content/uploads/penguin_highway_movie1.png)
原作は小説の「ペンギン・ハイウェイ」。
著者は森見登美彦。
同者の代表作として「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」などがあり、これらもアニメ化、映画化されている。
ちなみに「ペンギン・ハイウェイ」は2010年に日本SF大賞を受賞している。
小説は角川文庫から発売されており、383ページと結構なボリュームがある。
森見登美彦の小説は主人公が独特の語り調で話が進む。
「ペンギン・ハイウェイ」も例に漏れず、主人公アオヤマ君の語りだ。
そのため、映像化するにはなかなかに難しいらしいが、脚本を作者 森見登美彦が信頼をよせる上田誠が担当している。
上田誠は「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」の脚本を手がけており、森見登美彦の作品はこれで3作目となるので安心して観ることができる。
あらすじ
「ペンギン・ハイウェイ」は、小学四年生のアオヤマ君と不思議なお姉さんの話。
アオヤマ君は大人に負けない程にいろいろな事を知っている。
小学四年生にして、毎日努力を怠らずに勉強をし、日々気になったことをノートに取り研究している。
そんなアオヤマ君が気になるのは、歯科医院のお姉さん。
お姉さんの不思議な力(とおっぱい)に興味津々なアオヤマ君。
アオヤマ君はお姉さんについて研究することにした。
少し不思議で、
一生忘れない、あの夏が始まる。
小学四年生のアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録している男の子。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、「きっと将来は偉い人間になるだろう」と自分でも思っている。そんなアオヤマ君にとって、何より興味深いのは、通っている歯科医院の“お姉さん”。気さくで胸が大きくて、自由奔放でどこかミス テリアス。アオヤマ君は、日々、お姉さんをめぐる研究も真面目に続けていた。
夏休みを翌月に控えたある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。街の人たちが騒然とする中、海のない住宅 地に突如現れ、そして消えたペンギンたちは、いったいどこから来てどこへ行ったのか……。ペンギンヘの謎を解くべく【ペンギン・ハイウェイ】の研究をはじめたアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。
「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」
一方、アオヤマ君と研究仲間のウチダ君は、クラスメイトの ハマモトさんから森の奥にある草原に浮かんだ透明の大きな 球体の存在を教えられる。ガキ大将のスズキ君たちに邪魔を されながらも、ペンギンと同時にその球体“海”の研究も進めて いくアオヤマ君たち。やがてアオヤマ君は、“海”とペンギン、そしてお姉さんには何かつながりがあるのではないかと考えはじめる。
そんな折、お姉さんの体調に異変が起こり、同時に街は 異常現象に見舞われる。街中に避難勧告が発令される中、 アオヤマ君はある【一つの仮説】を持って走り出す!
果たして、 お姉さんとペンギン、“海”の謎は解けるのか― !?
http://penguin-highway.com/ より
制作会社
映画「ペンギン・ハイウェイ」のアニメーション制作会社は「studio Colorido(スタジオコロリド)」
聞き慣れない名前だったので調べてみたら、パズドラのCMを作った会社のようだ。
それ以外は正直、知らない作品ばかりだった。
しかし、「ペンギン・ハイウェイ」のトレーラーを観てもらえば分かる通り、非常にキレイな映像を作れるようだ。
特に宇多田ヒカルの曲をBGMに使ったスペシャルトレーラーは、これだけで一つの作品なんじゃないかというクオリティだ。
映画「ペンギン・ハイウェイ」の感想
夏にふさわしい清々しい映像
青空に通り雨、街や森に草原、川にプール。
子供の頃の夏休みの思い出が蘇りそうな、風景の背景や演出が本当に素晴らしい。
「海」のある草原にたどり着いた時の風景は感動すら覚える。
カメラワークも人を中心にしつつも、背景が美しく映えるように描かれている。
「君の名は」の新海誠と同レベル…とまでは行かないが、かなりのクオリティの高さだ。
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![](https://mac-design.work/wp/wp-content/uploads/penguin_highway_movie14.png)
![](https://mac-design.work/wp/wp-content/uploads/penguin_highway_movie7.png)
また、この映画のキーとなる「ペンギン」達も非常に可愛い。
よちよちフラフラ歩く姿なんてキュンとする。
ペンギンが大量にワラワラ発生する姿が可愛くてしょうがない。
ただ、缶コーラ→ペンギンになる姿は非常に可愛いが、ペンギン→缶コーラは結構エグかったかな。
お姉さんの剛速球ペンギンには笑った。
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![](https://mac-design.work/wp/wp-content/uploads/penguin_highway_movie19.png)
少し難解。それでも泣けるストーリー
アオヤマ君が研究している「お姉さん」「ペンギン」「海」は実は深い関係がある。
これが意外と難解。
小説では長めに説明をしてくれるが、映画では時間の関係か結構端折られている。
とは言え、脚色は多々あるものの本筋は変わっておらず、しっかり筋が通っている。
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魅力的なキャラクター
アオヤマ君
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非常に大人びた小学四年生。
周りの友達たちは小学生っぽいのに、アオヤマ君(とハマモトさん)はとても変わっている。
利口すぎる。
口調も考え方も知識も小学四年生じゃない。
お姉さんの寝顔をみて遺伝子がどうのこうの言い出すし、理解出来ないまでも「相対性理論」の本を読むし、おっぱいについて一日30分は考えてるし。
他にも、「悪いと思ったら反省し、謝る」「怒りそうになったら、おっぱいのことを考えて心を鎮める」「昨日の自分より偉くなる」「結婚相手を決めている」などなど。
そんな完璧に思えるアオヤマ君も、間間に垣間見える「あぁ、やっぱり子供が背伸びをしているな」と思える所があり、愛嬌を感じられる。
また、それらの行動に嫌味がなく、ただ真っ直ぐ突き進んでいるのでとても気持ちがいい。
声優さんの声も演技もピッタリで、とても良い主人公だった。
それとおっぱい好きすぎ。
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お姉さん
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アオヤマ君の通学途中にある歯科医院に勤めているお姉さん。
アオヤマ君憧れの女性だ。
一見、近所にいそうな優しいお姉さんだ。
アオヤマ君が年齢に似つかわしくない生意気なことを言っていても、それをしっかり聞いてくれちゃんと反応してくれる。
そしてその反応の仕方がとてもおもしろい。
海辺のカフェでのアオヤマ君との会話はとてもリズミカルで、とてもほっこりする。
また、おっぱい好きのアオヤマ君目線で話が進むので、胸がアップになることが何度もある。
しかし小学生目線なので、必要以上にセクシーに描かれていない。
セクシー過ぎず、清純過ぎず、とても良い塩梅のお姉さんだ。
そんなお姉さんは何故かペンギンやコウモリを作り出すことが出来る。
そしてお姉さんはペンギンを作り出すと、アオヤマ君に「君にこの謎が解けるか」と問う。
しかし当の本人もなぜこんな事ができるのか分かっていない。
実はお姉さんは人間ではないのだ。
しかもお姉さん自身もその事を知らず、自分を人間だと思っている。
恐らくこの時点で殆どの人は「お姉さんは不思議な能力を持っている」という認識を持ち、「人間ではない」という印象を持たないだろう。
それだけ人間らしく描かれている。
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しかしストーリーが進むに連れ、お姉さんは薄々それを感じ始める。
それでもアオヤマ君の「お姉さんは人間ではない」と言うショッキングな研究結果に「すごいね、よく考えた」とお姉さんらしく褒める。
そんな平気なふりをしているお姉さんも、やはりショックを受けている。
海の中に入った時のアオヤマ君との会話にそれが垣間見える。
「もし私が人間でないとして、海辺の町の記憶はなんだろう」
「お父さんやお母さんの事を覚えているし、自分が今まで生きてきた思い出があるよ。それも全部作りもの?」
そしてラストシーンの海辺のカフェでの会話は涙腺が崩壊した。
「アオヤマ君、私はなぜ生まれてきたんだろう」
「わかりません」
「君は自分がなぜ生まれてきたのか知ってる?」
「わかりません、でも自分がなぜ生まれてきたのか、いつかわかるかもしれない」
「分かったら教えてくれる?」
「教えます」
「私は人類じゃないんだってさ」
「信じられません」
「そういえば君は人類代表だったな」
「そうです。いずれ本当に人類代表になるんだ。僕は宇宙にも行く。」
「それだけ偉くなったら、私の謎も解けるだろうな。そうしたら私を見つけて、会いにおいでよ」
「僕は会いに行きます」
(映画のセリフをちゃんと覚えられなかったので、小説から引用)
アオヤマ君の前では
お姉さんは人間ではないが、とても人間らしく魅力のある人だった。
ペンギン
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ペンギンについては、ただただ「かわいい」。
オープニングではペンギンが街の中を走り回るが、それがまたかわいい。
ボールのようにコロコロ転がる姿や、ペチペチ走る姿、水の中を泳ぐ姿。
どれも非常に可愛い!
後半、波のように押し寄せてくるペンギンたちは、ペンギン好きには天国のようなシーンだろう。
アオヤマ君のお父さん
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アオヤマ君のお父さんは出番が少ないものの、その教育方針が素晴らしい。
子供が疑問に思ったことを、ただ答えを教えずに、解き方や考え方を教える。
この教育方針からアオヤマ君はノートを取るようになり、研究をするようになったのだろう。
映画終盤でアオヤマ君とお父さんが話すシーンが描かれているが、会話の内容はカットされてしまった。
私はこの最後のお父さんとの会話が非常に好きなので、カットされたのは少し残念だ。
アオヤマ君はお姉さんが消えてしまうと分かってても、海を消す選択をせざるを得なかった。
それを理不尽だと感じているアオヤマ君。
お父さんはそれを汲み取り、理論的・哲学的にアオヤマ君を慰める。
普通の子供だったら全然慰めにならないが、アオヤマ君にはこの慰め方が一番いいのだろう。
父親の優しさが感じられる。
そしてなんと言っても最後の2人のセリフが心に染みる。
「父さん、ぼくはお姉さんがたいへん好きだったんだね」
「知っていたとも」
このシーンが映画でカットされてしまったのは非常に残念だ。
ウチダ君
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小説版ではそこまで印象の強くなかったウチダ君。
映画ではかなり存在感が大きくなっていた。
というのも、小説では同じ場所にいても触れられていないシーンでも、映像ではちゃんとそこにいる。
アオヤマ君と仲の良い友達なので、一緒に行動することが多く、出番はかなり多かった印象だ。
声優さんの力量もあり、小説よりも生き生きしたキャラになっている。
作品にマッチした宇多田ヒカルの主題歌
「ペンギン・ハイウェイ」の主題歌は、宇多田ヒカルの「Good Night」。
これ以上無いというくらい、歌詞も声も作品にハマっている。
少し残念だったのが、エンドロールの背景はずっと黒だった事。
エンドロールは宇多田ヒカルの曲のバックに、作中の美しい風景を使っても良かったんじゃないかと思う。
最後もキレイなものを観て聴いて終わりたかったなと、ちょっとだけ残念だった。
原作から削られた(変更された)所
小説を読んだのが結構前の事なので、気が付いた所だけ書き出した。
- 実験中お姉さんの傘から花が咲くシーン
- 「ぐんない」の話
- ウチダ君と死んだ時の世界の話
- アオヤマ君のお父さん、ハマモトさんのお父さん、お姉さんが顔を合わせる大学シーン
- プロジェクト・アマゾン最終報告(映画では内山くんだけで達成)
- スズキ君が「海」の事を研究者に話してしまったことへの言い訳
- 最後のアオヤマ君とアオヤマ君のお父さんがした「お姉さん」について
映画「ペンギン・ハイウェイ」の評価
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夏の映画としてとてもおすすめできる映画だ。
導入でも書いた通り、映像が美しく、みずみずしく描かれているので観ていて気持ちがいい。
キャラクター同士のやり取りも非常に面白く、ドロドロした所も無い。
悲しく切なくはなるが、嫌な気分にはならないので、全体を通して安心して観ていられる。
最後お姉さんが消えてしまうので、少し悲しいく寂しい気持ちが残ってしまうが、
「アオヤマ君には絶対に夢を叶えて欲しい、絶対に叶えられる!」と応援する気持ちで見終わることが出来る。
そんな訳で夏を締める映画としてオススメしたい作品だ。
私の夏に必ず観る作品「サマーウォーズ」「AIR」の中に「ペンギン・ハイウェイ」を追加しようと思う。
映画を観て「少し物足りないな」と感じた人は、小説を読む事をオススメする。
映画では描かれなかったシーンやセリフなどでいろいろ補完される。
特に一番最後のアオヤマ君とお父さんの会話は、一読の価値ありだ。