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ドラゴンクエスト YOUR STORY 感想
映画「ドラゴンクエスト YOUR STORY(ユアストーリー)」が2019年8月2日に公開となった。
「ドラゴンクエスト YOUR STORY」を鑑賞してきたので感想を書く。
ここからは映画「ドラゴンクエスト YOUR STORY」とゲームの「ドラゴンクエストV」のネタバレありの感想なので、これから映画を観る人でネタバレ嫌いな人は注意!
この記事の目次
「ドラゴンクエスト YOUR STORY」とは
「ドラゴンクエスト YOUR STORY」は、「ドラゴンクエスト」シリーズ内でも人気の高い「ドラゴンクエストV 〜天空の花嫁〜」(以下ドラクエV)を原案に3DCGアニメ化した作品。
「ドラクエV」は1992年にスーパーファミコンで発売されたRPGゲーム。
キャッチコピーは「愛がある、冒険がある、人生がある」で、”親子三代のストーリー”、”花嫁選び”、”敵モンスターを仲間にできる”など、ドラマ性の高いストーリーとなっている。
特に”花嫁選び”で”ビアンカ派 vs フローラ派”の議論は30年近く経った今でもしばしば行われている程だ。
個人的にも、スーパーファミコンの「ドラクエV」は何度もプレイしており、「ドラクエ」の中でも一番思い入れの強い作品。
「ドラゴンクエスト YOUR STORY」のストーリー
ゲームでは大きく、”少年時代”、”青年時代(前半)”、”青年時代(後半)”に分かれる。
約1時間40分の映画では全て描くことができないので、ダイジェストになったり端折ったりしている箇所は多い。
少年時代
ダイジェストとして、ゲームの画面を使いながら描かれた。
“出産”や”パパスとの冒険”、”ビアンカ・フローラの出会い”、”レヌール城”、”ベビーパンサーを仲間に”、”オーブのすり替え”、”パパス殺害”など、必要なイベントが紹介された。
青年時代前半
主に描かれたのは“奴隷からの脱出”、”ブオーンとの戦い”、”嫁選び”、”出産”、”ビアンカ拉致・主人公石化”。
地名や街名は登場するが、実際に訪れたのはラインハット(城門前)、サンタローズ(小屋周辺のみ)、サラボナくらい。
青年時代後半
主に描かれたのは“石化解除”、”妖精の城”、”ドラゴンオーブゲット”、”大神殿突入”、”最終決戦”、”vsゲマ”、”vs ミルドラース”、”エンディング”。
音楽(BGM)
ドラクエVに使われていたOP、フィールド、戦闘、街などのBGMがふんだんに使われていた。
アニメの「ダイの大冒険」でもそうだったけど、ゲームのBGMがかかるだけでテンション上がる。
IV、VIの音楽もちょいちょい使われていた。
同じ天空シリーズだからかな?
追加・変更された設定・イベント
- 男の子とサンチョによる、主人公石化解除のための「ストロスのつえ」入手の冒険の追加
- ブオーンに止めを刺さず、仲間に。
- 天空装備は天空のつるぎのみ。
- 主人公がグランバニアの王様になるイベントはカット。少年時代のOPからパパスがグランバニアの王様という設定はそのままのようだが、主人公がグランバニア王になることはなく、そもそもグランバニア城すらも登場しない。
- 主人公の子供は男の子のみに。ゲームでは男の子と女の子の双子だが、映画では男の子のみとなった。
- ヘンリーの嫁となるマリアは登場しなかった。
- 仲間モンスターはスライムとゲレゲレ(一応ブオーンも)のみ。
- 馬車は入手せず、魔法のじゅうたん、天空城などの移動手段は未登場。
- 主人公の装備はずっとパパスのつるぎで、杖は使わない。(ドラゴンの杖も登場せず)
映画「ドラゴンクエスト YOUR STORY」の感想
結論を先に言うと、長い話を全体的によくまとめてあり好印象だったが、最後のオチが予想外過ぎてガッカリした。
映画鑑賞前に「評判が芳しくない」という情報は持ち合わせていたが、「おそらくストーリー端折りすぎによる酷評だろうな」と思っていた。
しかし鑑賞してみると、端折られた箇所は沢山あるものの非常によくまとめられていた。
ヘンリーやサンチョ、プサンなどのサブキャラも(ちょい役ながら)登場したし、キーとなるイベントはしっかり抑えられている。
ただ、予算の関係なのか、時間の関係なのか、モブキャラや訪れる街が少ない。
街は大神殿の麓の街とサラボナのみ。
モブキャラは酒場で少し出る程度で、ルドマン屋敷ではメイドの一人も登場しなかった。
嫁選びに関しては感心させられた。
ビアンカ派もフローラ派も納得の行く構成になっている。
ブオーンを倒せばフローラと結婚できると約束され、主人公は見事ブオーンを打ち倒す。
主人公のリュカはフローラにベタぼれで、フローラも結婚に満更ではない。
ビアンカの後押しでリュカがフローラにプロポーズ。
無事に結婚が決まり、浮かれていたリュカに占いババが「結婚に迷っている。心の奥底には違う気持ちがある」と言い、その気持に気がつけるアイテム(赤く光る聖水)を渡す。
それを飲んだリュカは自分の心の奥底ではビアンカが好きだという事に気が付き、フローラとの結婚を取り止め、ビアンカにプロポーズする。
フローラは突然振られて可哀想…と思いきや、実は占いババはフローラが変化の杖(かモシャス)で変身した姿だった。
フローラは主人公のビアンカに対する気持ちに気が付き、リュカの背中を押したのだった。
ビアンカが嫁になることは決定事項としても、フローラ派にもしっかりと考慮されたイベントだった。
その他のイベントも良く出来ていたし、戦闘も”ブオーンとの戦闘”や”ジャミ・ゴンズとの戦闘”、”大神殿での決戦”は迫力があって非常に良かった。
その為、鑑賞していた時は「かなり良くまとまっているじゃないか」という好印象だった。
しかし、その印象はラスボス”ミルドラース”の登場で一気に覆された。
終盤、リュカはゲマを倒すが、魔界への門が開いてしまい、そこから現れる”ミルドラース”。
ゲームでの”ミルドラース”はピッコロ大魔王に角の生えたような姿(返信後は赤くデブッちょで羽の生えた姿)だが、映画で現れたのは白い仮面で透明な体に黒い■が肩から足に向かって常時流れている姿。
登場のところまでは「あぁ、映画の”ミルドラース”の外見を変えたんだな。」と思っただけだったが、ミルドラースは自らを”コンピューターウイルス”だとトンデモ発言。
「は?」
嫌な予感がよぎる。
ミルドラースウイルスは、リュカ以外の時間を止めると、キャラクター・背景のテクスチャを剥いですべてを白く、クラビティ処理をなくしてすべてのものを浮かせ、そして消滅させた。
そしてこの世界は「ドラゴンクエスト」は主人公がゲームの世界をバーチャル体験している世界だった事が明かされる。
”「ドラクエV」の映画”を見に来ていたのに、突如SAO(ソードアート・オンライン)が混ざってきた。
ストーリーが「ドラクエV」と違ったり、端折られたりしているのはのは”「ドラクエV」を体験できるバーチャルゲームだから”ということらしい。
こんな展開を誰が予想しただろうか。
そしてこれを誰が望んだのだろうか。
おそらく、「ドラゴンクエストYOUR STORY」を観に来た人たちが望んでいたのは「SAO」じゃなく、「ドラゴンクエスト」だ。
純粋に剣と魔法のファンタジーの世界を楽しみにしていたはず。
さらにミルドラースウイルスは続ける。
「ウイルスを開発した人間は、この世界が大嫌いだから壊そうと思った。その製作者からのメッセージは『大人になれ』だ」
えぇ…。
最終場面で突如「ゲームの世界でした」なんて言われ、更にはウイルスに「大人になれ」と説教までされる始末。
ミルドラースウイルスは「ドラゴンクエスト」のバーチャルゲームを消し去ろうというウイルスだから、主人公が負けた所でデータは消えるだろうが人が死ぬわけじゃないので、全く危機感が無い。
結局、実はスライム(CV.山寺宏一)がアンチウイルスで、アンチウイルスのロトの剣を作り出し、リュカはそれでウイルス退治。
ビアンカや息子たちは何が起こったかも分からず、ウイルスを作った人間にも特に触れられず、エンディングを迎える。
「ドラクエV」の映画を観に来たのだから、最後はラスボス”ミルドラース”との戦いを観たかった。
ただそれだけで良かったのに…。
「ビアンカも息子もゲレゲレもただのデータでした」なんて言われた後に、エンディングで再度登場したところで、愛着なんてもう持てないわ。
映画「シティハンター」で誰かが「ラーメン屋でラーメンを頼んだら、ラーメンが出てきた」なんて表現をしていた。
これは望んでいた映画を見に行ったら、期待通りの映画だったという、非常に上手い表現だと思う。
その表現で映画「ドラゴンクエスト YOUR STORY」を表せてもらうと、「ラーメン屋でラーメンを頼んだら、見た目はラーメンのケーキが出てきた」。
途中まで「お!うまそうなラーメン!」と思わせておいて、食べてみたら「ラーメン違うんかい!」って感じ。
上手いこと表現できなくて申し訳ないが、この映画では「望んだラーメンは出てこなかった」。
結局の所、この映画はターゲットは誰だったんだろう?誰が楽しめるんだろう。
かなりダイジェストになっているから、ゲームをプレイしていない人は「???」となる場所が多いだろうし、ゲームをプレイしている人にとっては”ミルドラースウイルス”の「大人になれ」なんて説教はいい迷惑だし。
「ドラゴンクエスト YOUR STORY」は誰をターゲットとした映画だったのか、さっぱりわからない作品だった。
少なくとも「ドラクエV」をこよなく愛する私には、受け入れがたい結末を迎えた作品だった。
オチ意外は結構満足度が高かっただけに、とても残念だ。